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2015年「保育学研究」第53巻 特集論文原稿の募集
■ 特集テーマ「園生活における子どもの育ち合い」
 2015年『保育学研究』第 52 巻の特集テーマを「園生活における子どもの育ち合い」としました。
 保育所や幼稚園、認定こども園などの園生活において、子どもとともに生活し保育実践を重ねていると、子どもが相互にかかわり刺激し合って、それぞれが自己発揮していく姿をしばしば捉えることができます。幼児期の子どもの発達において、同年代の子どもとともに過ごす園生活が不可欠であることは、今さら述べるまでもなく、「園生活における子どもの育ち合い」は、自明の理と言えるでしょう。しかし、保育者であれば誰しもこうした「育ち合い」を実感しつつも、その過程や背景にあるものについて研究として取り上げ、いざ実証していくとなると、その子どもの特性や子ども同士の関係、保育者と子どもたちとの関係、さらにはその園の文化等々が微妙にかつ複雑に絡み合い、一般化や普遍化することの難しさを痛感します。
 そこで、第 52 巻では、こうした保育実践の場で起こっている現象を敢えて特集テーマとして設定し、改めて「保育の日常」を問い直し、保育の質の向上を目指していきたいと考えました。その際、次のことを視野に入れて、研究に取り組んでほしいと考えます。
 これまでの『保育学研究』では、「園生活における子どもの育ち合い」と関連する、幼児期における人間関係の発達や、個の育ちと集団の育ちを問う論文を多数掲載してきました。また最近では、協同性の発達にかかる論文投稿が数多く見られます。しかし、その一方に、協同的な関係が芽生える以前の関係、たとえば友達関係の基盤となる親しさの感情である「親密性」や「つながり」、またそのつながりを形成するものは何なのか等々、3歳から4歳頃にかけて芽生える仲間意識などの研究は少ないように思われます。幼児期は、こうした視点も踏まえてテーマに迫ることが大切と考えます。そのためには、子どもの内面の心の動きに温かな関心を寄せ、友達とかかわり中で味わうためらいや戸惑い、葛藤などの一見マイナスと思われる体験も含めて「子どもが育ち合う過程」を捉えていくことが必要です。
 また、子どもが育ち合うには、保育者にはどのような役割が求められるのでしょうか。「育ち合い」を腐心するあまりに、子ども同士の間で起こる問題の解決を急いでしまっても、反対に子どもに任せ過ぎて必要な援助のタイミングを逸しても、発達に必要な経験は得られません。こうした保育者の役割からもテーマに迫ることが可能です。
 さらに近年、少子化の中で、園生活において友達とかかわることが苦手な子が増えつつあるという指摘もありますが、実際にはどのような実態があるのか必ずしも解明されているわけではありません。こうした視点からもテーマに迫る必要があります。
特集テーマにかかわるさまざまな問題を、理論的にあるいは実践的に解明する研究論文の投稿を期待しています。
(文責 神長美津子)