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会長挨拶
新会長挨拶
 2021年5月15日選挙で選出され、第9代会長に就任することになりました。私は2009年から2016年まで第7代会長を務めさせていただいておりましたので再任となります。しかしこの5年間で社会の状況は新型コロナ感染拡大等もあり急激に変化しました。その中で日本保育学会のこれからを見通しつつ、定款に記された本学会の目的「保育の研究を通して会員相互の交流と連携を図り、子どもたちの健やかな発達と幸福をめざし、保育界の進歩及び会員に共通する利益の向上に貢献すること」という原点に常に立ち戻りながら考え、行動していきたいと思います。戸田雅美・大方美香両副会長と共にチームとなり学会運営にあたりたいと思っておりますのでよろしくお願い申し上げます。  コロナ沈静化が見通せない中で、学会が検討すべき課題は山積しています。第1は、大会開催のあり方です。全国ブロック制が始まったのは、私が前回会長であった時からで10年で1巡し2巡目となりました。その中で初めてのオンライン学会が中部ブロックで開催されました。小林真大会委員長を始め大会関係者、中部ブロック理事評議員等準備に当たられた皆さま、汐見前会長はじめ執行部や事務局の尽力があってオンラインでも2300名を超える学会員が参集できました。保育学を研究する者が互いに知を共有し新たな知にふれ対話することの楽しさや大会の重要性を改めて実感されたのではないでしょうか。これまでならば興味はあっても同一時間帯に複数個所に参加できなかった発表やシンポジウム内容もオンラインだからこそ視聴でき、全国海外どこからでも旅費も時間もかからず参加できるメリットを感じた方も多いと思います。しかし、中には慣れない方法に戸惑われたり、オンラインだから参加しなかった・できなかった方もおられたかもしれません。また一体感やつぶやきの共有、双方向性などが対面でないために難しかった部分もあります。学会運営面から言えばオンラインのシステム構築のために業者委託経費もかさみ、準備委員の方にも初めてであるゆえにご苦労をこれまで以上におかけすることともなりました。今後1,2年間は置かれた状況の中でベストと考えうる判断決定を模索することが続きそうです。ご理解をお願いしたいと思います。  第2には、学会全体の財務状況に関する検討が必要となっています。ここには業者委託等の経費高騰等も影響しています。健全で持続可能な学会運営のための仕組みや規程整備をしていきたいと考えます。それに伴い、受益者負担の視点から、学会参加費等に次年度から変更等もありますがこのような背景をご理解くだされば有難く存じます。  そして第3には、交流の場のオンライン開催です。汐見前会長の時から地区ブロックでの研究集会活性化が図られ、また保育政策検討委員会も新設され公開シンポジウムが開催されるなど、大会以外での研究交流の場も増加しています。オンライン開催により各地域の特色を生かした企画に全国各地からの多くの会員が参加してきています。オンラインでの活用を一時的な緊急対応手段としてだけではなく、スマートな研究集会をより発展させる方向も考えていきたいと思います。そしてこの発展延長上で、国際交流や若手研究者ネットワークの構築推進等も積極的に進められたらと考えております。  コロナ禍での対応に追われ、通常の業務に加え新たな業務が増えている方も多いと思います。しかしこのような状況の中で少子化や過疎化も確実に進んでいます。困難な事態に直面する子どもたちや保護者、保育者や園、自治体関係者、保育者養成校教員や各種団体等保育界の方々に対し、学会はどのような貢献が可能かを考えることが求められています。これからの保育へのグランドビジョンを共に形成しながらさらなる一歩を踏み出し、子どもたちの笑顔溢れる未来に向けた希望の保育学を形成していく場に日本保育学会がなっていくこと、社会が混迷し大きく変わる時期だからこそ保育の知のグローバルコモンズを創る組織に日本保育学会がなることが必要と思います。「私は日本保育学会の会員だ」と会員であることを一人一人が誇りとし、学び対話し連帯する組織として、公共の保育に資する歩みの歴史を引き継ぎ、次世代へとリレーを続けたいと思います。そのために皆さまの率直な声をお聴かせください。どうぞよろしくお願い申し上げます。

2021年9月1日 一般社団法人 日本保育学会 会長 秋田喜代美