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55巻1号

【55巻1号】

表題 時間に制約のある片付け場面における保育者の援助と意図 (自由論文)

著者 箕輪 潤子, 秋田 喜代美, 安見 克夫, 増田 時枝, 中坪 史典, 砂上 史子

巻号・頁・年月 55巻1号, 6-18, 2017.8.

要旨 本研究では,4歳児6月片付け場面における時間の制約に伴って生じる葛藤に対して,保育者がどのような援助を行うのかについて,園の片付けの特徴を踏まえて明らかにすることを目的とし,分析を行った。その結果,①殆どの保育者が,子どもの思いを受容したり認めたりした上で,時間に間に合わないことに関わる援助を行うと考えていること ②園が普段行っている片付けの実態と保育者の援助方法に関連があること ③園によって時間に間に合わないことについての援助に特徴があることが明らかになった。

キーワード:片付け, 保育者の実践知, 園の実践知

 

 

 

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【55巻1号】

表題 母子遊びにおいて観察された未就園2歳児の基本的動きの経年変化

―2004・2005年度と2010・2011年度の比較― (自由論文)

著者 坂上 裕子, 金丸 智美

巻号・頁・年月 55巻1号, 19-30, 2017.8.

要旨 本研究では,母子遊びにおいて観察された未就園の2歳児の基本的動きの経年変化を,動作発達の視点から検討した。対象は,2004・2005年度(Ⅰ期)の2歳児112名,2010・2011年度(Ⅱ期)の2歳児112名であった。記録された35の基本的動きのうち八つの動きにおいて,それらがみられた子どもの人数比率に期による違いが認められた。Ⅱ期ではⅠ期に比べ,かがむ,しゃがんだ姿勢をとる,またぐなどの不安定な姿勢での動きを示した子どもの割合が低く,遊びの最中にころんだ子どもの割合が高かった。運動能力の低下の兆しは,2歳代から既にみられることが示唆された。

キーワード:2歳児, 基本的動き, 母子遊び, 観察法, 経年変化

 

 

 

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【55巻1号】

表題 幼児同士の仲間関係形成に伴う造形表現過程の変化

―4歳児の製作場面におけるモノを「見せる」行為と製作過程に着目して― 

(自由論文)

著者 佐川 早季子

巻号・頁・年月 55巻1号, 31-42, 2017.8.

要旨 本論文は,4歳児と他児との仲間関係形成に伴い,製作場面において幼児がモノを他児に「見せる」行為および製作過程がどのように変容するのかを検討し,模倣から「ずらし」の表現に至る造形表現過程を明らかにすることを目的とする。幼稚園4歳児クラスを1年間参与観察し,対象児1名の「見せる」行為を文脈に即して分析した。分析の結果,製作場面における幼児同士の「見せる」行為には,①相手と同じモノをつくったことを伝え,相手と「同じ」であることを確認する,②相手と同じモノをつくるために交渉し,「同じ」であることを求める,③自他のモノの「違い」を伝え,相手と自分が「違う」ことを相互に受容し合う,という変容が見られた。そして,相手と「違う」ことを受容し合う時期に,模倣だけでなく,他児の表現からアイデアを採り入れ,自己表現を行う「ずらし」の表現過程が見られた。

キーワード:「見せる」行為, 製作, 協働, 幼児同士の相互作用, 模倣から「ずらし」へ

 

 

 

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【55巻1号】

表題 「特別な支援」の受容に伴う保育現場の組織変容の萌芽

―私立保育所のフィールドワークから― (自由論文)

著者 垂見 直樹橋本 翼

巻号・頁・年月 55巻1号, 43-54, 2017.8.

要旨 本稿の目的は,保育所における「特別な支援」の受容に伴う保育現場の変容過程を分析することである。先行研究では,「特別な支援」の受容に伴い,保育者個人の心理的負担が生じると報告されている。本稿の事例研究においては,そうした個人レベルの分析に加え,組織に着目し,分析を行った。その結果,「特別な支援」の積極的受容により,園内の雰囲気の良化や,新たな仕組みの形成がみられた。また,事例を踏まえ,「特別な支援」の受容による組織変容の条件を仮説的に示した。保育現場にとって,「特別な支援」は旧来の保育実践を再検討する視座を提供するが,その受容が妨げられる構造的課題もあると推察される。

キーワード:特別な支援, 保育所, 組織変容, フィールドワーク

 

 

 

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【551号】

表題 「信頼モデル」による記録,評価は障害児保育実践をどう変えるのか

―「学びの物語」作成による半年間の保育実践からの検討― (自由論文)

著者 吉川 和幸上村 毅川田 学

巻号・頁・年月 55巻1号, 55-67, 2017.8.

要旨 本研究では,「学びの物語」の記録,評価による,半年間の障害児保育実践の経過を辿ることにより,信頼モデルによる記録,評価と保育実践の関連を検討することを目的とした。物語の作成初期は,保育者は子どもの学びの構えを積極的に見出す一方で,未熟な行動や問題点を指導によって改善することを目指す,従来の視点で振り返りを行っていた。しかし,作成を積み重ねるにつれて,保育環境の調整によって,遊びや仲間関係が充実することを目指す視点で振り返りが行われるようになり,実践が展開した。結果から,障害児保育実践における信頼モデルによる記録,評価の意義について論じた。

キーワード:障害児保育, 記録と評価, 信頼モデル, 「学びの物語」

 

 

 

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【55巻1号】

表題 保育士の役割の二重性に伴う保育相談支援の葛藤

―親・子の相反ニーズにおける子どもの最善の利益をめぐって― (自由論文)

著者 亀﨑 美沙子

巻号・頁・年月 55巻1号, 68-79, 2017.8.

要旨 本研究は,保育士の役割の二重性に伴う保育相談支援の葛藤の実態と構造について,探索的に明らかにすることを目的としている。保育士を対象とした半構造化インタビューを行い,SCATを用いて分析を行った。その結果,保育士の葛藤は,①親と子の相反するニーズ間での板挟み,②子どもの表明するニーズの転換の2点にあり,これらの葛藤には「子どもの最善の利益が考慮されていない」という思いが通底していることが明らかとなった。また,この葛藤は「倫理的ジレンマ」として捉えられ,その背景要因として,子どもの最善の利益の不確実性と保育士の子どもとの心理的な近接性があると考えられた。

キーワード:保育相談支援, 役割の二重性, 葛藤, 子どもの最善の利益, 倫理的ジレンマ

 

 

 

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