文字サイズ
ホーム »  会員の方へ » 学会誌『保育学研究』 » 特集論文投稿について » 2018年「保育学研究」第56巻70周年記念号論文
2018年「保育学研究」第56巻70周年記念号論文
■テーマ:「保育をいかに『評価』するか-子どもの豊かな生活や遊びを保障するために-」
 新制度をめぐる議論の中で、待機児問題の克服にみられる保育の量的拡大についてはかなりの議論が行われてきたが、保育の質の向上ということは、量的拡大問題と有機的に結びつけられて十分議論されてきたとは必ずしも言えない。しかし、子どもと家族の現実、社会構造や文化の急速な変化、将来の不安の増大などの現実を踏まえるとき、保育の質の向上を目指すことは私たちが共通に自覚しなければならない喫緊の課題といえよう。 保育の質の向上のために、現場で種々の研修を行うことは当然であるが、その際前提になるのは、現在実践されている保育をどう評価するかということである。すなわち保育の質の議論の前提として、保育の評価をどう行うかということが先行しなければならない。評価の活動による価値付けや価値判断が行われることなしに、保育の質の内容、意味、そのための方策等の議論は始まらない。 これまで、幼稚園や保育所で評価を行う必要性は、国の政策面ですでに主張されてきている。幼稚園はでは「学校評価ガイドライン」(平成23年11月に改訂)が策定されて今日に至っているし、保育所においては社会福祉事業の構造改革の一貫として、第三者評価を導入することが「福祉サービスの質に関する 検討会」等で検討され、2002(平成14)年に報告書がまとめられ、翌年以降基礎自治体単位で第三者評価が実施されてきている。また、諸外国の保育環境評価等も翻訳され、様々な評価スケールが紹介され始めている。 こうした「評価」は制度化された評価としてイメージされ、実践現場に評価に対する懸念や忌避感をもたらしている現実もある。真に子どもの生活や遊びを豊かにするために実践に貢献する評価とはいかなるものなのか。「評価」は、元来、制度として求められるからとか、義務だから行うというものでなく、自らの実践や職場を「善い」ものにするために、実践活動の一貫として、自覚的に、ときには無自覚的に行っているもののはずである。 以上のような趣旨から、保育学会70周年記念号の特集テーマを「保育をいかに「評価」するか-子どもの豊かな生活や遊びを保障するために-」として論文を募集することにする。子どもの発達にふさわしいとはいえないような保育が我が国において蔓延することがないよう、保育の目標の洗い直し、子ども像の見直し、実践の客観化、遊び等の中で子どもに育っていることの読み取りとその是非などに焦点を当てて、多面的に評価について議論を深めていきたい。評価の多層性と自覚にいたるプロセスの解明、保育の質の向上に貢献する評価のあり方、制度化された評価活動の到達点と課題など、戦後80年に向けた保育学の構築を目指し、会員からの意欲的な論文の投稿を期待する。