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2018年「保育学研究」第56巻特集論文の募集
■ 特集テーマ「保育の質を問う」

 新たな制度が始まる中で、今改めて「保育の質を問う」研究が求められている。
 保育の在り方が多様化する中で、乳児も含め就学前の子どものあたりまえに存在していた生活が保障されなくなっているという実態が指摘されることも多い。その場合、現実的な対応を迫られる中で「質の低下」が起こらざるを得ない状況がある一方で、発達的にふさわしくないと考えられてきた保育が「質の高い保育」として行われ、それが保護者にも支持されてしまう実態もある。前者の場合であれば、なぜ「質の低下」が起こっているかという研究が求められるであろう。また、後者の場合であれば、「保育の質」とは何か、「発達にふさわしい」とは何かという問いからの研究が行われなければならない。
 また、それぞれの保育の実践者が「保育の質」を高めようと、まさに目の前の子どもたちに合わせて考え、実践を計画し、一人一人の子どもや状況に応じて実践を工夫し、その実践を振り返るという、保育実践の当事者性を中心に据えた視点から「保育の質を問う」研究を充実させることも喫緊の課題である。そして、この場合においても、実践の当事者だけではなく、実践に深くかかわって共に考えるという立場から「保育の質を問う」研究も可能であろう。なぜなら、これは、「保育の質」について実践の当事者と共に吟味し、時には自らの責任において実践の在り方を提案するという形で、「保育の質」の高い実践の創造に大きくかかわるからである。
 さらに、世界に目を向けると、現在、乳幼児期からの育ちに対する関心が高まり、その関心に基づいて「保育の質」の高い実践が探求され、実践され、紹介もされてきている。しかし、それらの保育思想や実践をあらためて「保育の質」という観点から研究的に、すなわち時には批判的に検討されているかというと、まだ十分とは言い難い。また、これまでの日本で大切にされてきた保育の思想、特に「遊び」や「生活」を中心とする保育実践について、現在の世界で起こっている新たな保育との違いを吟味しつつ「保育の質」という視点から研究を深めていくことも課題としてまだ残されている。
 そもそも、「保育の質」という言葉はいつごろからどのような経緯で使われるようになったのだろうか。また、「保育の質」という言葉では表現されてこなかったとしても、これまでも日本で、あるいは、世界で保育思想として研究されてきたこともまた、「保育の質を問う」研究であったととらえることは可能なのだろうか。もし、可能だとしたら、これまで大切にされてきた保育思想、すなわち、何をもって善い保育とするかという考え方の「知」の所産を、改めて「保育の質」という視点で捉え直す研究も必要であろう。
 以上のような趣旨から、特集のテーマを「保育の質を問う」として論文を募集することにした。会員から意欲的な論文が投稿されることを期待している。