表題 自閉症児にみられる音楽行動の変容:乳幼児音楽行動の発達プロセススケールの作成を通して (特集:子どもの体験と成長・発達)
著者 谷村 宏子
巻号・頁・年月 48巻1号, 10-22, 2010.8.
要旨 コミュニケーションや対人関係に問題のある自閉症児の支援に有効な音楽やリズムを用いた活動のあり方についての研究を行う。自閉症児の音楽行動から発達を把握する指標を作成するために,ピアジェの理論による10段階に分けた発達段階に基づいて,聴く,動く,操作,歌う,および人との共同性に分類した音楽行動を基に「乳幼児音楽行動の発達プロセススケール」の作成を試みた。また保育中に筆者が個別支援を行った自閉症児の音楽行動を作成した発達プロセススケールと照合し,レーダーチャートであらわすことにより音楽行動の変容をより浮き彫りにすることができた。その上で,対人関係の発達を促すような働きかけを保育者が意識して行うことで発達を支援する手立てとなる。
キーワード:自閉症児 個別支援 音楽行動 乳幼児音楽行動の発達プロセススケール 音楽・リズム
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表題 「みんなの中の私」という意識はいかに育つか:自閉症のある中学生の自己意識の変容の事例から (特集:子どもの体験と成長・発達)
著者 山﨑 徳子
巻号・頁・年月 48巻1号, 23-35, 2010.8.
要旨 この研究の目的は,障害児学童保育Pで,自閉症のある中学生まさきが,「友だち」と呼んで同世代の子どもとかかわろうとするまでを,「私は私」と「みんなの中の私」という自己意識の観点から考察することと,彼の周囲の人々のかかわりの意味を問うことである。Pで包まれるような状態であったまさきの自己性は早期に発揮され,「私は私」という自己意識は充実したが,他者を受け止めることはできず,自己防衛的になっていた。「棒人間」を使って人とやりとりすることは,自己内の対話的関係を生み出し,さらに他者との対話的関係が豊かになり,相互に主体として受け止めることの繰り返しがなされた。まさきは自分がなりたい「良き自己」を感じ,人格を形成することの喜びや誇りを得,人にかかわろうとする志向性が生まれた。「みんなの中の私」という自己意識の元になったまさきの「内的な他者」に生命を吹き込んだのは,「障害への対応」ではなく,周囲の人々の受動的なかかわりと,まさきの成長を喜びあう心情であった。
キーワード:自閉症のある中学生 自己意識 「私は私」 「みんなの中の私」 関係の発達
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表題 仲間とともに育つ:アスペルガー症候群の子どもの体験と成長 (特集:子どもの体験と成長・発達)
著者 湯澤 美紀・湯澤 正通
巻号・頁・年月 48巻1号, 36-46, 2010.8.
要旨 本研究では,信頼関係のある保育者に支えられたアスペルガー症候群の男児の活動を観察し,アスペルガー症候群の男児とクラスの子どもたちが共に成長するための体験を明らかにした。保育者の働きかけは,アスペルガー症候群の男児を含めて成員一人ひとりがもてる特性を認め合うという保育の文脈を生成した。アスペルガー症候群の男児の体験は,他の子どもに共有され,また,アスペルガー症候群の男児に関わる問題を一緒に考え,解決した体験は,自身の問題解決へと生かされた。アスペルガー症候群の子どもの特性を生かした保育の重要性が示唆された。
キーワード:アスペルガー症候群 信頼関係 共有体験
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表題 幼稚園における非日常的な体験とその意味について:幼児たちはどのようにゴーリーと出会うか (特集:子どもの体験と成長・発達)
著者 大野 歩・真鍋 健・岡花 祈一郎
巻号・頁・年月 48巻1号, 47-57, 2010.8.
要旨 本研究は体験が幼児の生活にどのような影響を与えているのかを分析することを目的にする。特に,幼児が物語を生きることにより,教師の意図を超え,非日常的な体験として機能していく諸相についても検討する。これまでの研究では,ファンタジーと現実の認識に関する研究が行われてきた(Woolly&Wellman1990)。また,想像上の生き物をめぐっての探検活動などは報告されているが,その非体験的な意味について検討されていない。本調査では,幼児は自園で語られている超自然的創造物へのイメージを「恐い」から,幼稚園を「守護する」イメージへと変容させ,受容していた。さらに,自身の経験した事実の確認・再現のみに止まらず,創造物に新たな意味を付与し,像を体系化した。さらに本研究は,幼児が物語を共有し,生きることで,幼稚園の活動に新たな意味づけをするということを明らかにした。
キーワード:幼稚園 非日常的体験 想像上の生物 物語 体系化
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表題 子どもの描く絵を物語として読み解くための試論:子どもの描く絵のテクストを物語として読む (特集:子どもの体験と成長・発達)
著者 志村 裕子
巻号・頁・年月 48巻1号, 58-68, 2010.8.
要旨 本稿の目的は,子どもの描いた絵の中の物語を理解する方法をみつけることである。本稿では,子どもの描いたタイプの違う絵と一人の子どもの描いた複数の絵を,物語論(ナラトロジー)の観点から分析した。その結果,絵の中に主人公をみつけることとその主人公と作者である子どもの距離関係を知ることによって,物語世界の質すなわちモードの違いをみつけ,それを子どもの絵の物語を理解するための糸口とすることができた。
キーワード:美術教育 児童文学 物語論 子どもの絵
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