教育基本法(平成18年改正)に家庭教育(同法第十条)と幼児教育(同法第十一条)が設けられて、間もなく10年を迎えようとしています。当時は、国が定める教育基本法という大きな法律で、親の役割や責務、教育の場としての家庭の意義にはじめてふみこむものとして、また、幼児教育の重要性を国として根拠付けるものとして大きな議論となりました。その後、民法第八二〇条(監護及び教育の権利義務;平成23年改正:以下同)、同第八二二条(子の懲戒)や同第八三四条(親権喪失の審判)なども改正され、より具体化しています。もちろん、保育所保育指針(平成20年改正)第六章保護者に対する支援が示され、幼稚園教育要領(平成20年改正)の第1章総則にも「家庭や地域における幼児期の教育の支援に努めること」とされて久しくもなります。
教育基本法の改正をきっかけに、種々の方策の結果が功を奏している面もあると同時に、子どもの生活や家庭に関する問題がますます顕在化している面も見逃すことができません。
具体的には、さらなる少子化の危惧がある中で現実的に同年代子どもが出会うことそのものが減り、保護者同士が出会うことすら、かつてのように自然にできることは困難になってきています。また、煮詰まった親子関係の中で完璧な子育てを目指す存在が指摘される一方で、虐待、特にその中でも放任など不適切な子育てを深刻化させていくケースも減ってはいません。また、近年では、子どもの貧困の問題も深刻化しています。生まれながらに家庭的な「格差」を背負って生活せざるを得ない子どもの存在も指摘されています。
すでに述べたように、保育所や幼稚園という施設に保護者の支援が求められてから一定の期間が過ぎました。この間には、従来の施設・制度を活用することに加えて、子ども会の再生、地域共同体の復活、子育てサークル、ママ友クラブ、子育て広場、放課後保育・教室、保育臨床コーディネーター、特別支援員、家庭支援員など様々な活動の取り組みが試みられてきました。一方で、現在世界では、乳幼児期からの教育の重要性が見直され、保育・教育の場では、さまざまな新たな実践的な試みが行われています。しかし、こうした実践的試みも、子どもを中心としながらも、家庭の役割とうまく連携することによって、成り立つものです。今、改めて「家庭の役割と保育・教育との連携」について多様な視点に立った研究が求められているのです。